庭研便り

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研究情報

吉河会長講演会「古都蘇州と庭園文化」好評で終了 

 この講演企画は、この時期に日比谷公園で行われたガーデニングンショウに合わせて日比谷図書文化館が企画したもので、中国蘇州庭園の専門家として吉河会長に要請があったものである。当初は1回(1時間半)で蘇州庭園を解説してほしいという事であったが、会長は蘇州という土地の文化背景を話さなければ、蘇州庭園についての理解は困難ということを説明し、その結果2016年10月15日と22日の2回に分けての講演となった。第1回目では、蘇州が文化都市として世界有数の地であったことが話され、南宋時代の国宝石碑「平江図」の貴重な拓本現物も展示された。また中国の南方と北方の文化の違いや、江南の経済力が庭園文化の原動力になったこと。蘇州の西にある大きな淡水湖太湖から産出した「太湖石」が唐代に北方でも愛され、古運河を用いて多くの石が運ばれた事。北宋時代には徽宗皇帝がその都開封に艮嶽という大園林を築造し、そこにも大量の名石が据えられたことなどが解説された。また名園誕生の裏には、横暴な明代の政治に抵抗した文化人達の不屈の精神があったことも話され、大いに感銘を与えたようである。しかしこれだけの話を、90分内にまとめるのはなかなか至難の技であったようである。

 第2回目は、「世界文化遺産登録の九名園ー美しさの秘密ー」と題した講演であった。その前に、蘇州園林独特の様々な造形特色について略説的な解説が行われた。続いて代表的名園である「拙政園」をやや詳しく画像で見ながら、細部の特色ある景色が説明された。ただ時間の関係もあって、個々の庭園については、その景色をダイジェスト的に見てもらうことになったのは少々残念であった。参加者のアンケートでは概ね好評だったが、何にしてもテーマに対して時間が短かすぎたという意見が多かった。ぜひまた同様の企画を立ててほしいという希望もあった。また会長を講師として、蘇州庭園めぐりツアーを希望する人もかなりあったようである。いずれにしても、このような講演会を通じて、日本人に蘇州名園の素晴らしさを理解して頂けるならば、両国の友好に寄与する所はとても大きいことは間違いないように思われる。

 

千代田区立日比谷図書文化館にて 吉河会長の講演会決定/演題は「古都蘇州と庭園文化」その魅力を探る、です

この秋10月15日(土) と22日(土) の2回にわたり、吉河会長の蘇州庭園についての講演会が開催されることになりました。1時間半ずつ2回に分けての講演となります。15日は「蘇州はなぜ中国一の庭園都市になったのか―その歴史と文化」22日は「世界文化遺産登録の九名園―美しさの秘密」と題して行われます。主催者の日比谷図書文化館では、この時期に行われるガーデニングショーに合わせてこの企画を立案したものです。先着順の60名が定員のようで、2回分同時の申込になります(1回だけの申し込みは不可)。受付は8月15日から。電話(03‐3502‐3340)か、メール(college(at)hibiyal.jp)で連絡とのことです。

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福島県にて驚くべき古式五輪塔を確認

 本年5月に行われた調査会において25日に確認された古式五輪塔は、その様式や細部から見て、鎌倉時代中期は下らない名品であることが吉河会長によって実証されました。それは長谷寺に保存されている五輪塔で「地輪・水輪」、「火輪・風輪・空輪」がそれぞれ一石で彫られているという希少な作です。現状の高さは約1mと小ぶりながら、その造形には平安期の古様さえ認められ、特に火輪上部に彫り出された風輪・空輪の美しさは格別です。残念なことに、火輪(笠)は軒と後部が失われておりますが、それ以外の全体はよく保存されています。各細部には、月輪内に見事な梵字があり、これも古式の薬研彫です。基礎には銘文のある可能性も高いようで、今後の調査が待たれます。ここにいち早くその写真を紹介して初期の発表とします。

DSC_5035●.jpg                                                                                                                                                                                                                                           見事な古式梵字

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   千葉寺の中世宝塔調査

  昨年9月、本会有志によって千葉寺(千葉市)墓地に保存されている石造宝塔2基の調査が行われました。共に無銘ですが、東塔が古式で鎌倉後期頃の作であり、西塔は少々時代が下ると推定されました。また、この両者の笠が入れ替わっている事実も突き止められ、高橋理事長によってその復原図も作成されています。同図は『庭研』397号(2015年秋号)に掲載済みです。

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千葉寺宝塔(東塔)

『秋田公中之郷名園之真景』図の紹介

  本会の杉村文夫氏(秋田県会員)が所蔵する貴重な絵図で、幕末から明治にかけて秋田佐竹藩の江戸名園(本所中之郷にあった)として知られていた「浩養園」の春景色が詳細に描かれています。

  この絵図については『庭研』399号において吉河会長が詳しい考察を発表しておりますので、参照をお勧め致します。(『秋田公中之郷名園之真景』図に描かれた幕末の佐竹氏庭園・・・吉河 功)

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[ 2016年4月9日 ]

『夢窓疎石 日本庭園を極めた禅僧』を読んでの所感

    2005年4月、NHKブックスから発行された『夢窓疎石 日本庭園を極めた禅僧』枡野俊明著、を読んだ。しかし、最近これ程読破するのに苦痛を感じた書物はない。私達は、これまで庭園史というものを真剣に追求し、おかしな先入観なしに研究してきたつもりである。そこでも最も問題の多い旧説として、「夢窓疎石作庭説」があることを主張してきた。その結果、「夢窓疎石が大の愛庭家であったことは真実といえるが、その作庭家説は誤りである」との結論に達している。
 しかしこの旧説は、現在でも文化庁はじめ、多くの庭園関係者に信じられている。ただ面白いことに、具体的に夢窓疎石の作庭を実証した研究というものは皆無なのである。ほとんどの人が「昔からそういわれているから真実であろう」という位の認識で、作庭家と信じているに過ぎない。この程、枡野俊明氏によって著された同書は、何の批判もなしにそのような旧説を認めたもので、研究を何十年も遅らせる類のまことに恐れ入った書であった。タイトルからして「日本庭園を極めた禅僧」というのだから、頭から作庭家説を肯定していることは明らかである。そして本文を読んでみると、どこにも夢窓疎石が作庭を行ったという事実の証明はない。こうなると、すでに信仰の領域に入っているとしか言いようがない。
  枡野氏も、同書において多少の文献は取り上げているが、それらはいずれも私達が精査したものばかりである。その文献は夢窓疎石が大の庭好きであり、施主として庭園についての好みを述べていることは分かるが、作庭指導を行ったと考えるのは誤りなのである。ところが枡野氏は、「夢窓国師は、石立僧と呼べるだろうか。広義に解釈すれば立派な石立僧であるが、庭園をつくることを職業のように特化していた人物であるかというとそうではない。」(同書一八五頁)としている。こんなことは当然の話で、夢窓は禅僧であり、しかも当時の宗教界では最高位にいた人物である。この事実をもってしても、作庭の専門家ではありえないのである。ところが枡野氏は「このようなことから、国師は庭園デザイナーのみならずプランナーでもあり、演出家でもあったといえる」(同書一九六頁)と記している。そのあまりの飛躍ぶりには、ただ驚きあきれるばかりである。
  枡野氏の文献解釈にも問題が多い、一例を挙げれば『臨川家訓』にある「仮山水」の語を「枯山水」と解釈されているが、仮山水とは今日で言う庭園と同義語であり、決して枯山水を意味するものではない。文献は正しく解釈しなければ、誤りを助長する結果になってしまうものである。

[ 2016年3月23日 ]

「日本三名園」という表現は明確な誤りであり、まだこの語を使用し続けているNHKに善処を求めたい!!

   近年マスコミで「日本三名園」という言葉が頻繁に使われている。05年3月12日のNHK正午のニュースでも、「日本三名園の一つ、水戸偕楽園……」という表現があった。
   しかし、この「日本三名園」という言葉は本来大きな誤りであり、「日本三公園」という言葉が、何時の頃からか一人歩きして三名園と誤られたものに過ぎないのである。
   大体数多い京都の素晴らしい名園が、一つも含まれない「日本三名園」などこじつけであることは明白であろう。正しくは「日本三公園」であることについては明確な根拠も存在しているのである。議論の余地はない。しかも、この「日本三公園」にしても、かつての新聞記者の勝手な思い込みから成立したものであった。
   日本文化を正しく後世に伝えるためにも、マスコミは正確な用語を使うべきであり、特にNHKには善処をお願いしたいと思う。なお、以上の根拠については、皆様の要望があればここで発表することも考えたい。

[ 2016年3月22日 ]


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